近年の複雑な税制改正や、労働人口の減少によるリソースの不足を受けて、業務効率化や従業員の負担軽減を目的に、「記帳代行サービス」を利用する企業や事業主が増えています。
この「記帳代行サービス」は、主に税理士(事務所)に依頼する場合と、外部の記帳代行業者に依頼する場合の2つの方法があります。
今回はそれぞれの場合について、依頼するメリット・デメリットと税理士法に関連した注意点をご紹介します。
記帳代行と税理士法違反行為について
記帳代行とは、事業を行う上で発生する売上や経費を帳簿に記録する業務を外部の専門家に委託することです。
この記帳代行は税理士法第2条第1項で定められる「税理士業務」には該当しないため、税理士資格を持っていない者にも依頼することが可能です。
しかし、税理士資格を所持していない者が記帳代行業務の域を超えて、下記の「税理士業務」を行った場合、税理士法違反行為に該当する可能性があります。
「税理士業務」とは、法第2条において、他人の求めに応じ、租税に関して、次に掲げる事務を行うことを業とすることをいう旨規定されています。
- 税務代理(例.税金計算、申告、過払金還付請求、税務調査立会など)
- 税務書類の作成(例.決算書、確定申告書、納付書など)
- 税務相談(例.節税方法、経費算入分類など)
それぞれの場合におけるメリット・デメリットと注意点
(1)税理士(事務所)に依頼する場合
メリット:税務・会計のプロが記帳を行うため、より正確な経営状況の把握ができる。決算申告や税務相談のほか、年末調整業務など範囲を広げて、一貫して依頼が可能。
デメリット:一貫して依頼する場合、比較的高価になる場合がある。
(2)外部の記帳代行業者に依頼する場合
メリット:比較的安価に依頼ができる。早期に対応されることが多く、経営状況の把握がしやすい。
デメリット:税務のプロが記帳を行う場合でないこともしばしばあるため、税務面においては正確な試算表でないことがある。決算申告や税務相談等の他の業務は依頼できないので、別途税理士との契約が必要。
注意点:依頼する記帳代行業者が税理士(事務所)と提携しているかを確認する。
今回は、記帳代行と税理士法違反行為についてご紹介しました。
事業を成長させていくためには現状の経営状況の把握は欠かせません。
同時にそのための適切な記帳代行サービスの選択も必須の条件となります。
自社の透明性を図るためにも、今依頼されている記帳代行業者とどのような契約を締結されているか、もし税理士資格を所持していない者に依頼している場合は税理士法違反行為に該当しうるような関与をしていないかを改めて確認してみてはいかがでしょうか。